「風の谷のナウシカ」ブルーレイディスク完成披露会見（後篇）

「風の谷のナウシカ」ブルーレイディスク完成披露会見（後篇）
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ブルーレイ化のモットーは、公開当時の状態を再現すること


本田雅一（以下、MC）：今度は『風の谷のナウシカ』の技術面を中心にお話を伺えればと思います。DVD版もかなりのお金と時間をかけてマスターを作り直した、素晴らしいものだったんですけど、今回はより高画質になるようにマスターを作り直したんですよね？


奥井敦（以下、奥井）：ブルーレイというメディアが出てきたというのもあるんですけど、「風の谷〜」公開当時にオリジナルネガからたくさんプリントを起こしていまして、ネガの傷みがかなりひどいんです。26年という時間が経過していますので、フィルムをそのままにしておくとどんどん劣化が進むわけですね。それをできるだけいい状態のうちにいいものを残しておきたいということもあって、今回のブルーレイ化に向けてオリジナルネガから一コマ、一コマスキャンしていったという感じです。


MC：その一コマ一コマの修復作業について伺いたいんですが、どういうプロセスだったんでしょうか。例えば、画（え）の風合いとか色については、宮崎監督と鈴木プロデューサーの記憶を探らなければならなかったんですよね。


奥井：二人が思い描いている色がそれぞれ違うと思うんですよね。その辺を擦り合わせる必要はあるんですけど、最初にその話を聞いてしまうと作業する現場はそれに縛られて手も足も出なくなってしまうので、最初にそういう話は聞かず、とにかくフィルムの上にある情報をまず1回デジタルデータに変換して映像化する。それを忠実に行ったものを、1回プレビューしたんですよね。そこから再度スタートしたということです。


MC：それに対して、僕の記憶ではこうなっていたとか、風合いに関してももう少し硬いとか柔らかいとか、そういったような話も出てきたんですか？


奥井：風合いに関しては、もともとフィルムには柔らかい特徴がありますから、それを忠実に再現していけば、それほど遜色（そんしょく）なく再現はできるんですけど一番苦労したのは色ですね。

ポイントとなる色は、宮崎駿監督こだわりのグリーン


MC：DVDの時は情報量が少ないから、硬い画（え）か、ぼけた画（え）にしかできないんですが、ブルーレイになると硬い画（え）も柔らかい画（え）も表現できるんですよね。表現の幅が広くなるのでフィルムの風合いを出しながら、しっかりと画（え）の質感、雰囲気を出せる。最後に、色のことを伺いたいのですが1回目の修復のプレビュー時に宮崎監督が緑にこだわっていらっしゃったそうですね。


奥井：最初のプレビューを観たときに全体的な印象として「グリーンの彩度が足りない」と。


MC：ではDVD版に対して緑を足してほしいということではなくて、スキャンして作り直したものに対して少し緑を足してほしいという感じだったんですね。そういった細かいところまで宮崎監督ご自身が判断されて、この映像が出来上がったという。


奥井：そうですね。彼の言葉を受けて、それからがまた苦闘の連続だったんですけど、その結果ここまで仕上げることができたといえます。


本田：最後に、「ここに注目してほしい」という見どころは？


奥井：僕は「風の谷〜」が公開された当時からアニメーションの撮影の仕事をしていたんですけど、「風の谷〜」を観たときに撮影技法というところでも驚愕（きょうがく）したんですよね。その一つがこの玉蟲（オーム）のシーンで、これは“ゴムマルチ”という手法なんですけど、今ではデジタル技術を使えば簡単にできてしまうものですが、当時アナログの撮影でこういうことをやったというのは非常に画期的だったと思います。


柏木：一つは奥井さんも話していた、ユパが玉蟲（オーム）に襲われるところ。あと、ナウシカが腐海（ふかい）の底に落ちたときのブルーがキレイでしたね。



『風の谷のナウシカ』ブルーレイディスクは7月14日（水）リリース！

予約受付中！



撮影：尾藤能暢

取材・文・編集：シネマトゥデイ

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