6/26公開「モダン・ライフ」 レイモン・ドゥパルドン監督インタビュー

6/26公開「モダン・ライフ」　レイモン・ドゥパルドン監督インタビュー
ロバート・キャパ賞受賞写真家であり、ドキュメンタリー映画界の大御所でもあるフランス人写真家、映画監督のレイモン・ドゥパルドン。彼の『農民の横顔』三部作の最終章にあたる『モダン・ライフ』が、晴れて日本で公開される運びとなった。それを期して、今回ドゥパルドン監督に話を聞くことができた。


——写真から映画に移行したきっかけは何でしたか。


「もともとは映画に興味があったのですが、写真の方が身近だったのです。わたしの家は田舎で農業をやっていたので、近くには映画学校などありませんでしたから。兄がカメラを持っていたので、まず兄のカメラを借りて写真を撮り始め、それからアシスタントになりました。でも映画はわたしにとっていわば“秘密の庭”のようなもので、いつか撮りたいとずっと思い続けていたのです」


——『農民の横顔　接近』から始まる農民三部作は、十年以上にわたるプロジェクトですが、なぜ農民たちにそこまで密着したいと思ったのですか。


「わたしが彼らに興味を持ったきっかけは、農業の不人気、農村の過疎化といった、近年フランス全体で深刻な社会問題となっているテーマにありました。それで彼らを追ったドキュメンタリーを一本作りたいと思ったのです。でもまさかそれが三部作のプロジェクトになるとは、自分でも想像していませんでした。わたし自身農家の出身なので、彼らと接するうちにとても親近感を持つようになったのです。たとえば映画のなかに出て来る、長髪のポール・アルゴ。彼の世代は女性がみんな都会に出てしまったので、彼はいまだに孤独な独り身ですが、わたしも両親の農家を継いでいたら彼のようになっていたのではないかと思います」


——彼をはじめとして、寡黙で多くを語らない農民たちの顔がとても印象的ですね。


その頑なな表情は逆にさまざまなことを物語っているかのようです。
「彼らは映像をつなぎ止める存在です。そういう人々は現代ではあまり多くはいません。わたしはこれまでいろいろなところを旅してきましたし、ド・ゴール大統領からジャン＝リュック・ゴダール、ブリジット・バルドーなど、さまざまな人物の写真を撮ってきました。でもわたしは、そんな自分が農民たちよりもインテリジェントで豊かだとは思えないのです。彼らの生活は質素で、多くの物を持たない。でもそれでいて彼らは地球のことをとても気にかけていますし、雨や風など、つねに自然と直に接する環境のなかにいるので、その視点にはとてもグローバルなところがあるのです」


——題名だけ聞くと、農村生活を描いているのにモダン・ライフとは皮肉な意味なのかと想像してしまいますが、そんなことはなく、ストレートな意味と受け取っていいのですね。


「はい、なぜなら彼らの生活には純粋さと本質があるからです。でもこの映画を撮り始めた98年当時は、周りから批判的に言われました。なぜ農民なのか、彼らはもう終わりつつある存在だ、そっとしておいてやればいいじゃないか、と。でもその後、４、５年ぐらい経って徐々に状況が変わってきました。エコロジー・ブームも手伝って、人々のメンタリティが変化し、自分たちのいわばルーツを知ることに興味を持ったのです。いまでは農村にも若い人々が少しずつ回帰しています。この映画が農民たちの本来の姿とその魅力を少しでも多くの人に伝えることができれば本望です」


「モダン・ライフ」
6月26日（土）より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

公式サイト


取材・文：佐藤久理子

「あずり貧乏」という慣用句があります。
一生懸命あくせく働いても貧乏から抜け出せない。
「あずり貧乏人宝」というようにも使う。

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